現地視察で見るベトナム医療

東南アジアの中でも高い成長を続けるベトナム医療市場。本稿では、現地医療機関および人材育成機関への視察を通じ、診療体制や病院運営の実態、外国人材活用の現状に迫ります。

HOAN HAO総合病院様

外観

病院内薬局

待合室

高稼働を維持する民間総合病院の運営体制

 当院は2016年に開設され、2019年に医療法人桂名会様の出資を受けました。現在は株式会社CUCによる運営支援のもと、民間総合病院として地域医療を担っています。病床数は70床規模ながら、病床稼働率は101%と高水準を維持し安定した運営体制が特徴です。

工業団地で働く従業者層を支える診療と収益構造

 患者層は主に工業団地で働く従業者層が中心で、収益構造は外来約80%、入院約20%です。保険診療30%に対し自費診療が70%を占める自費比率の高さも特徴。院内薬局は保険診療患者専用とし、自費診療患者は院外薬局で対応しています。

人材体制と教育強化による質の向上

 人員体制は医師120名(うち常勤70名)、看護師240名を擁しています。M&A後は看護教育体制の整備が進み、接遇面の質も向上。組織力の底上げが図られています。

AI導入と設備近代化の推進

 設備面ではAI内視鏡を導入し、人的確認では見落としが懸念されていた微小病変の検出精度向上に寄与しています。さらに昨年の改装により院内設備が近代化され、診療環境の向上につながっています。

医療IT化の遅れと市場参入の課題

 一方で医療分野におけるIT化の遅れは今後の課題です。電子カルテの導入は限定的で、レントゲンもフィルム運用が継続するなどアナログ要素が残存。オーダリングシステムも未整備であり、改善余地の大きい領域です。

在宅医療の展開と介護分野の成長可能性

 近年は在宅医療にも取り組みを広げており、介護施設と連携しながら1日あたり約5件の往診を実施しています。ベトナムではケアマネージャー制度が存在せず、リハビリ技士などの医療職や家族が分担して担っているのが実情です。介護人材およびケアマネジメント体制は発展途上にあり、今後の成長が期待されます。

MEKONG人材派遣株式会社 日本語学校様

外観

ベトナム政府認定の
送り出し機関としての役割と教育体制

 当機関は、日本の技能実習制度に基づきベトナム人材を募集・選抜・教育し、監理団体を通じて実習先へ派遣する政府認定機関です。日本語や専門知識に加え、文化・習慣、職場ルール、労働安全に関する教育を実施し日本での円滑な就労を支援しています。

授業風景

介護分野における人材育成と活用の現状

 介護職種にも対応し、N4にとどまらずN3レベルの日本語教育を実施することで即戦力化を図っています。国内では都内介護施設の約70%が外国人材を活用する一方、早期離職が課題となっており、受け入れ体制の整備が重要なポイントです。現場での定着支援の強化も求められています。

制度転換と人材定着の特徴

 技能実習制度は2027年より「育成就労制度」へ移行予定であり、制度運用の見直しが求められています。失踪問題は建設分野に多い一方、介護分野では比較的定着が進んでおり、ベトナム人材は文化的背景から高齢者介護への抵抗感が少なく、介護適性が高いとされています。

医療現場での役割と今後の課題

 看護師資格の取得は依然として難しく、現状は特定技能人材の「介護」として看護助手業務を担うケースが中心です。今後は外国人介護人材の増加を見据え、医療・介護現場における受け入れ体制整備が重要課題です。教育と現場双方の連携強化が鍵となります。

HANG XANH 国際総合クリニック様

待合室

救急治療室

製品紹介を通じた現場ニーズの把握

 医師および管理部門スタッフに対し、当社シンリョウの容器類サンプル(投薬瓶、滅菌済スポイト等)を用いた製品紹介を実施しました。医師からは、日本企業の「患者本位の製造姿勢」に対して高い評価が寄せられています。品質面においても、滅菌個包装などに対し良好な印象であり需要の可能性について前向きな意見が得られました。

投与現場における計量実態と容器ニーズ

 現地では液剤投与時の計量方法が統一されておらず、目盛付き容器のほか、目分量や注射器を使用するケースも見られます。一方で、粉剤処方が比較的多いとの見解も得られました。運用のばらつきが見られる状況です。 こうした中、特に小児科領域や在宅医療(寝たきり患者)においては、投与量の正確性や服薬管理の観点から、計量可能なボトル容器の有用性が示唆されました。投与時のばらつき低減や安全性向上の観点からも、一定のニーズが見込まれます。

患者層と受診体制の特徴

 外国人患者の来院はほとんど見られず、主にベトナム在住の中堅層が患者の中心です。予約は電話受付が基本であり、地域特性を反映した受診体制となっています。

 今回の現地視察を通じ、ベトナムの医療・介護分野は高い需要を背景に成長を続ける一方、医療ITの未整備や人材体制のばらつきなど、発展途上の側面も多く認められました。特に外国人材の活用や在宅医療の拡大が進む中で、制度設計と現場運用の両面での整備が今後の課題と考えられます。