ヴィンテージワインの魅力的な歴史と
そこに込められた風味の深淵

ヴィンテージワインは、時間の経過とともに風味と価値が高まるワインです。この記事では、ワインを嗜む方に知っておいてほしいヴィンテージワインの歴史や基本知識をお伝えします。おすすめのヴィンテージワインや飲み方、保管方法にも触れているので、ぜひ参考にしてみてください。

ヴィンテージワインの歴史

 ヴィンテージワインの「ヴィンテージ」は、ブドウの収穫年を意味しています。つまり、ヴィンテージワインだからといって、必ずしも味や品質が保証されているわけではありません。長期熟成を経て味わいや香りに深みが出たものをオールド・ヴィンテージワイン、評価が高い年に作られたものをグレート・ヴィンテージワインと呼びます。

ヴィンテージワインの当たり年を目安に

 美味しいヴィンテージワインを選ぶには、原料のブドウの熟度(糖度)や仕立てた時の酸度、タンニン(渋み)の量や質を重視する必要があります。そこで参考になるのが、ヴィンテージチャートです。ヴィンテージチャートとは、生産地域ごとの収穫年の評価と飲み頃を、評論家・専門誌・輸入会社・協会などがそれぞれ独自に評価した指標です。評価の高い年をグレート・ヴィンテージと呼び、評価の低い年をオフ・ヴィンテージと呼びます。

ボルドーワインのオフ・ヴィンテージの魅力

 オフ・ヴィンテージは、悪天候などで収穫したブドウの品質が悪く「ハズレ年」とも呼ばれていますが、味も悪いとは限りません。ブドウが持つ本来の甘味や酸味が違っても、生産者の努力や技術によって唯一無二の味わいを楽しめる可能性があるからです。たとえば2001年は乾燥と低い気温で凝縮感に欠けるブドウが収穫されたものの、バランスの良い甘味があり熟成を楽しめるオフ・ヴィンテージとして販売されています。

ワインテイスティングの基礎知識

ワインテイスティングは、ホストテイスティングとワインの味わいを評価するテイスティングの2種類があります。ホストテイスティングは、レストランなどの飲食店でワインの品質が落ちていないかを確認するためにおこなうものです。一方のテイスティングは、ワインそのものの味わい深さなどを評価するためにおこないます。テイスティングで注目するべきポイントは、外観・香り・味わいの3要素です。

視覚から入ることが大切

ワインテイスティングでは、まず視覚的に濃さや澄み具合を確認してみてください。赤ワインはグラスを約45度傾けてワインとグラスが接している部分を、白ワインはグラスを傾けずに真横から見ます。一般的には、色が濃いほど、また澄んでいるほど高品質なワインであるといわれています。

香りを楽しむことも重要

ワインを注いだときに漂う、果実香(アロマ)とスワリング後の熟成香(ブーケ)の2種類の香りを確認してみてください。1回目は、注いだワインに鼻を近づけて、果実の香りがはっきりとわかるほど高品質と判断できます。2回目は、グラスを回して空気に触れさせ、熟成が進んだときに香りがどう変化するかで品質を判断します。香りを長く嗅がず、最初に感じた印象を大切にするのがポイントです。

味わいを感じる

ワインを口に含むと、甘味・酸味・渋味(タンニン)・アルコールの順番で味わいが感じられます。少量のワインを口に含み、舌全体を使って味わいを確認してみてください。4つの要素が、バランスよく整っているほど高品質で味わい深いワインといえます。

おすすめのヴィンテージワイン

ここからは、ヴィンテージワインのなかでも評価の高い、グレート・ヴィンテージに該当するワインと比較的新しいワインを紹介します。高品質のワインを選ぶためには、ヴィンテージチャートを参考にするのがおすすめです。

終戦直後に生産されたグレートヴィンテージ

第二次世界大戦中は、多くの葡萄畑や醸造所で被害が出ましたが、戦後1945年にはヨーロッパ全体で高品質なブドウが収穫できました。1945年はボルドーやブルゴーニュなど傑出したワインが誕生した年でもあり、メモリアルヴィンテージとして高く評価されています。
普通の銘柄はピークを超えている可能性が高いですが、希少性が高く、ヴィンテージワインを嗜む方であれば一度は口にしたいワインでしょう。

世界各地で大当たりが生産されたビッグヴィンテージの年

1990年は、フランス・ドイツ・イタリア・アメリカなど世界各国のワイン産地で高品質なブドウが収穫されました。ワインの歴史を振り返っても類稀な、ビッグヴィンテージとして知られています。
生産から30年の月日が経ったタイミングは、最適な飲み頃になっている銘柄が多いのも魅力といえるでしょう。

2010年以降は安定したヴィンテージが生産され続けている

技術の進歩に伴い、2010年以降は毎年安定して高品質なワインが生産されています。毎年のように品質の良いワインが出荷されているため、グレート・ヴィンテージのありがたみが薄れつつあるのが現状です。
一般的に希少性の高さが付加価値につながるため、直近よりも数年〜10年ほど前に生産されたものを探すと、コストパフォーマンスの良いワインが見つかります。

ヴィンテージワインの購入と保管方法

 ここからは、高品質なヴィンテージワインを購入する方法をお伝えします。購入したあとのワインの保管方法についても併せて紹介するので、参考にしてみてください。

ヴィンテージワインを購入する方法

 ヴィンテージワインは、ワイナリーや専門店で購入するのがおすすめです。ワインは繊細なため、保管方法が適切でなければ、未開封でも品質が落ちる可能性があります。ワインを専門的に取り扱っているお店であれば、仕入れ先や保管方法、そして販売方法を徹底しています。

購入後のヴィンテージワインを保管する方法

 購入したヴィンテージワインを保管するときは、直射日光と振動を避けられる場所を選ぶようにしてください。室温は15度程度が理想ですが、6度から20度の範囲であれば香りの劣化や褐変などのリスクを避けられます。また60〜80%ほどの高湿度な環境がワインには向いています。自宅で理想的な環境が作れない場合は、ワインセラーの購入もおすすめです。

ヴィンテージワインを美味しく頂く為に気を付けること

ヴィンテージワインを美味しく頂くためには、銘柄選びや保管環境以外にも注意するべき点があります。より美味しく頂くために気を付けるべき4つのポイントを紹介します。

購入してもすぐには飲まないこと

ヴィンテージワインを購入したときは、すぐに開封せずに最低1週間ほど立てた状態で保管するようにしてください。長期間熟成されたワインほど、澱(おり)と呼ばれる沈殿物が発生します。立てて保管すると澱がボトルの底に落ちるため、ザラつきや渋みを感じずに楽しめます。

コルクを開ける際には細心の注意をする

ヴィンテージワインは、長期間かけて熟成されているものが多いため、コルクを開けるときには注意が必要です。力任せに開けようとすると、コルクが崩れてワインボトルの中に落ちてしまいます。ソムリエナイフなどの専用器具を使って、丁寧に抜き取るのがポイントです。

美味しく頂くには温度も重要

ヴィンテージワインは、種類や銘柄ごとに美味しく飲める適切な温度が異なります。白ワインは10〜14度、赤ワインは14〜18度、シャンパンは8〜12度、甘口デザートワインは5〜12度が最適です。熟成期間の長いヴィンテージワインと熟成期間の短い若いワインでも、適切な温度が異なるので、気を付けましょう。

購入して飲むまでの温度管理

購入したヴィンテージワインの品質を落とさず保管するなら、温度や湿度が安定したワインセラーを活用するのが理想です。ただし、1週間程度で開封する予定であれば、ワインセラーの代わりに冷蔵庫に保管しても問題ありません。

まとめ

「ヴィンテージワイン=高品質」とは断言できないものの、希少性が高くて味わい深い銘柄が多く存在します。どんなに高品質なヴィンテージワインでも、購入方法・保管方法・飲み方によっては、その良さが薄れてしまう可能性があります。購入するときは専門店を利用し、温度や湿度の管理に気を付けて、理想的な状態でヴィンテージワインをお楽しみください。