第2回 医療機関の税務相談
– 経費・給与編 –

Q 必要経費について(これは経費になりますか?)
A 医院・クリニックの経営上支出した費用は、すべて必要経費となるわけではありません。個人的な飲食や遊興費はもちろん必要経費になりませんし、医院・クリニックが自宅と併用している場合は、光熱費等も医業に使用する広さや割合で必要経費を算出する必要があります。支出を税務上の必要経費とするのは、その支出が経営上、直接要した費用及び関連した費用である事が必要で、適正に計算し控除しなければなりません。
【必要経費にならない主な支出】
- 家事関連費用(家事に使用した光熱費・食事代・生活費・養育費)
- 生計を一にする配偶者とその他の親族に支払った給与・家賃(青色専従者を除く)
- 専業主の退職金
- 国民健康保険
- 生命保険料
- 税金(所得税・住民税とその延滞金等)
- 罰金・科料等
Q 役員の給与・賞与・退職金などは損金算入(必要経費)が認められますか?
A 以下の要件を満たす事で必要経費として認められます。
1 定期同額給与
支給額が1ヶ月以下の一定期間毎でかつ支給額が同額である給与。
2 事前確定届出給与
役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する定めに基づき、管轄の税務署に事前の届出をしている給与。ただし不相応に高額な役員給与は必要経費として認められず課税対象となり、また医療補法にも余剰金の配当禁止規定がありますので注意が必要です。
Q 当法人の理事長(役員)が退職することになり、退職金を支給したいのですが必要経費として認められますか?
A 認められます。役員の退職給与は、不相応に高額でない金額であれば認められます。ただし、その適正額はその役員の勤続年数、退職事情、同規模法人との比較等を総合的に判断しなければなりません。
Q 当法人で15万円の医療器具を購入しました。全額その期に経費にできると聞いたのですが大丈夫ですか?
A その期に必要経費にできます。申告を条件として取得額30万円未満の減価償却資産は一括してその期に費用計上することができます(年間合計300万円を限度)。また、取得額20万円未満の減価償却資産は、その全部または一部を一括償却資産として3年間で均等償却することができます。
※医療法人で使用する医療機器には耐用年数が定められており、これに基づいて毎期償却することになります。
Q ゴルフクラブに法人会員として入会しました。入会金・年会費・プレー料金は、交際費として経理処理するのでしょうか?
A 入会金は資産、年会費は交際費として処理します。ただし、特定の人だけが利用する場合は給与として取り扱うことになります。また、プレー料金は業務遂行上であれば交際費、それ以外であれば給与としての取り扱いとなります。その他にロータリークラブ等の社交団体に法人会員として入会した場合は、入会金・会費とも交際費として取り扱います。
Q 医師会主催の海外視察旅行に院長が参加しました。この費用は全額経費となりますか?
A 業務の割合によって決定します。海外視察のための渡航費用については細かく定められています。一言で説明しますと「業務に従事する割合によって経費の割合も決まる」となります。逆に業務割合が1割以下となる場合は、経費として認められません。この割合を算出するには細かな規定がありますので、詳細は顧問税理士に相談しましょう。
Q クリニックのホームページを制作したいと考えています。制作費用は広告宣伝費として処理すればよいのでしょうか?
A 広告宣伝費として必要経費になります。ただし、データーベースやネットワーク等の高度な機能を付加するといったシステム開発やプログラミング等の費用の場合、ホームぺージとソフトウェアの制作費用と区分して処理します。ソフトウェア費用は無形固定資産として計上し耐用年数に応じて減価償却します。
Q 当法人では、大学病院から週に1日程度医師の派遣を受け、その都度給料を手渡ししています。派遣医からは「天引きされる所得税が多い」と不満の声が多いのですが、天引きされる所得税を減らすことはできますか?
A 月額表乙欄の税率を適用することで天引きする税率を少なくできます。多くの医療機関で大学病院の医局から医師の派遣を受け、診療業務に従事させていますが、慣習として日払いが多く、この場合、給与の税額は日額表乙欄が適用され、税額も高額になってしまいます。その対処法として、派遣医に対して月額の給与をあらかじめ決めておき、月ごとに、または派遣を受ける都度に分割して支払うといった基準を設け、月額表乙欄の税額を適用することができます。
Q 役員や看護師に社宅を提供した場合、給与となるのでしょうか?
A 適正な家賃を徴収すれば給与となりません。役員に社宅を貸与する場合、その家屋が自社所有か借上げか、床面積、豪華さ等によって適正な賃貸料を算出します。徴収する家賃が算出した適正賃貸料以下の場合は現物給与となります。また豪華であるかの判定も、床面積や取得価格、内外装、設備等を総合的に判定し徴収します。時価(実勢価格)の方が大きい場合は、その差額が給与として取り扱い、源泉徴収が必要です。また、看護師や従業員に貸与する場合は役員とは異なる算式で適正家賃を算出します。この適正貸借料の半額以上を徴収すれば、給与課税はされません。
Q 看護師が残業した場合、夜食を支給していますが、給与所得として課税しなければいけませんか?
A 勤務時間以外の勤務によって支給される夜食は課税する必要はありません。通常の勤務時間以外の時間に仕事をした看護師(従業員)に対して、食事を支給した場合、それが勤務をすることによって支給されるものであるときは、課税する必要はありません。なお、食事代として、金銭を支給した場合は給与として課税されることになります。また、正規の勤務時間による勤務の一部または全部が深夜(午後10時から翌日の午前5時まで)に及ぶ深夜勤務者に対しては夜食の支給ができないため、これに代えて通常の給与に加算されて支給される食事代で、その支給額が勤務1回については300円以下のものについては課税されません。なお、支給額が300円を超えるかどうかは、消費税及び地方消費税を除いた金額により判定することになります。
