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クラフトジンの魅力と楽しみ方
自宅でお酒を楽しむ方も増えてきた近年では、ビールや日本酒などの定番のお酒だけではなく、ウイスキーやカクテルなども人気を集めています。なかでも今回はクラフトジンに焦点を当てました。通常のジンとの違いや楽しみ方から、奥深いジンの世界に飛び込んでみましょう。

クラフトジンの定義
クラフトジンには明確な定義はありません。一般的には通常のジンの定義を守りつつ、作り手の想いや技術が込められたこだわりのジンをクラフトジンと呼びます。それでも通常のジンとの違いは大きく3つあるといわれ、1つめは小さな蒸留所などで作られている点です。通常のジンは大量生産が主流で、大きな蒸留所や大手メーカーで作られています。一方のクラフトジンは小さな蒸留所で、少数の作り手によって作られています。丁寧に作られている分、1度に多く生産できず、製造量が少ないことがほとんどです。
2つめは作り手が好きなようにアレンジしている点です。ジンはジュニパーベリーを風味付けに使用する以外は制限がなく、お酒のなかでも自由度が高いとされています。そのため、作り手は蒸留酒の枠を超えなければ製造方法も自由に選択できます。また、使用するボタニカルも好きなものを組み合わせることができ、自分のこだわりを追究しやすく世界中で多くの種類が作られるようになりました。
3つめは地域特有の素材を使用している点です。世界は地域によって気候も違い、それにより人々の好みも違います。世界各地にいる作り手は、その地域や風土に合ったボタニカルを熟知しており、そのボタニカルの魅力を最大限に引き出す知識も豊富です。
さらに、地域の特産品なども使用して唯一無二の個性的な1品を作り上げることができます。
このように、自由度の高いクラフトジンだからこそ、幅広いフレーバーと種類の多さが実現できているといえます。
世界のクラフトジン
自由度の高いクラフトジンだからこそ、各地域によって特徴が大きく違います。代表的な地域の特徴をご紹介します。
◆ ヨーロッパ
ヨーロッパではその国ごとの特徴がいかされており、さまざまなものがあります。たとえば、オランダはジン発祥の国といわれており、クラフトジンでも伝統的な製法を採用しつつ、複数の蒸留物を組み合わせて複雑な味を楽しめます。ドイツは他とくらべて少し甘味があり、カモミールやフェンネルなどのハーブ、シナモンといった香辛料をふんだんに使用し、スパイシーな風味も特徴のひとつです。また、ワインが主流のフランスではブドウを使用するなど、他のお酒からヒントを得て作られているものも多くあります。
◆ アメリカ
アメリカではジュニパーベリーの風味が抑えられているものが多く、苦手という方も比較的飲みやすいのが特徴です。また、アメリカではおもにポットスチルという蒸留器が使用されており、ボタニカルの風味がより強く引き出されている傾向にあります。
◆ オーストラリア
ユーカリでミントのようなすっきりとした味わいを出すなど、豊富な自然からさまざまなボタニカルを使用するのが特徴です。植物だけではなく海や砂漠などからも要素を取り入れ、海水や海藻など他の地域では使われないボタニカルも使用しています。
日本独自のクラフトジン
日本で作られるクラフトジンは日本ならではの素材が使われており、日本らしい風味を味わえるのが特徴です。日本でのクラフトジンの始まりは2016年とまだ歴史は浅いですが、日本産は世界でも評価が高く、ジャパニーズクラフトジンと呼ばれ人気を集めています。これは、日本ならではの和のボタニカルを使用している点が大きな理由です。
たとえば、山椒や生姜などの香辛料でスパイシーさも出しつつ、ゆずなどの和柑橘で上品さをくわえて、日本らしい上品さと繊細な味わいが楽しめます。他にも桜の花や葉、煎茶などは世界でも日本のイメージとして定着しており、日本の個性を表現できるものとして大きな特徴となっています。
また、製造にも他の地域との違いがあり、蒸留器の形状や蒸留方法、熟成なども工夫し、日本独自の製法を確立してきました。日本だけの工夫がされているからこそ、ボタニカルの良さがいかされ、世界中で人気を集めているといえるでしょう。
クラフトジンの楽しみ方
初めてクラフトジンを手に取る方にとっては、あまりの種類の多さにどれが良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。選び方のコツや飲み方からクラフトジンならではの楽しみ方をご紹介します。
◆ 好みのクラフトジンを見つける
まず、定番の選び方として使用するボタニカルから選んでみましょう。レモンが好きな方はレモンが使用されているもの、スパイシーな風味が好みであればスパイスが多く使用されているものなど、好きな香り、好きな風味を原材料から選んでみると好みのものが見つかりやすくなります。好みがわからない方は、クセの少ない柑橘系から挑戦してみると、初めてでも抵抗なく飲めます。
また、産地で選ぶのも良いでしょう。好きな地域、行ったことのある地域から選ぶのも面白い発見があるかもしれません。初めて選ぶのに失敗したくないという方は、なじみのある日本産、伝統的なオランダ産から挑戦するのもおすすめです。
そして、ボトルのデザインからインスピレーションを受けて選ぶのも選び方のひとつ。クラフトジンは作り手の想いがこもったものだからこそ、ボトルのデザインにも特徴的なものが多くあります。色が美しい、ボトルの形が好みなどで選ぶと、ボトル自体を飾る楽しみもあるでしょう。
◆ クラフトジンをじっくり味わう
ジンは一般的にはカクテルベースとして使用されることが多く、カクテル以外で飲んだ経験がない方も多いのではないでしょうか?クラフトジンは作り手のこだわりが詰まった個性的なものが多いため、まずはストレートで個性的なボタニカルの風味をそのまま感じましょう。自分はスパイシーなものが好みだ、もっとフルーティーさを感じたいといった感想から、自分に合っているかどうかを再確認でき、次は違うものを選んでみようと追求心が沸いてきます。ストレートでそのままの味を楽しんだあとは、ロックや水割りで風味の変化を楽しんだり、ライムやベリーなど使用されているボタニカルと同じ素材を加えてみたりするのも、自分でできる新しい楽しみ方です。
作り手の想いが込められたクラフトジンを楽しもう
普通のジンとはちがい、作り手の想いが込められたクラフトジンはひとつひとつが個性あふれた唯一のジンといえます。自由度の高い枠のなかで作られたクラフトジンの世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。