令和も深まる日本酒の魅力!
多様な楽しみ方とトレンドを紹介
伝統的に楽しまれてきた日本酒は、今でも変化し続けています。ある程度たしなんではいても、いつも同じものを飲んでいたりトレンドに疎かったりする方も多いのではないでしょうか。当記事では、日本酒の基礎知識を押さえつつ、様々な切り口での楽しみ方とトレンドをご紹介します。

日本酒とは
最初に趣味として楽しむうえで欠かせない、日本酒の基礎知識をご紹介します。基本の日本酒の特徴は、特定名称酒や季節ごとの違いから掴めます。
日本酒の定義
国税庁の日本酒造組合中央会で定義する、清酒と日本酒は次の通りです。
清酒とは、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたものを言います。清酒のうち、日本酒とは、原料の米に日本産米を用い、日本国内で製造したもののみを言います。
例えば、こしていないどぶろくは日本酒ではありません。最近では海外でも清酒造りの動きが広まっており、アメリカのニューヨークやハワイ、フランスのパリなどにも醸造所があります。
特定名称酒
日本酒は「普通酒」と「特定名称酒」の2種類に分けられ、特定名称酒は原料と精米歩合によって名称が付けられます。
日本酒には表層部を削ったお米を使用しますが、精米歩合とはお米の削り具合のことです。削るほど雑味が減るとされていて、精米歩合60%以下は吟醸、70%以下は大吟醸などと名称が付きます。また、醸造アルコールが添加されているかによっても名称が異なり、アルコール添加のされた本醸造に対し無添加のものは純米です。
原料と精米歩合、アルコール添加を組み合わせて、純米吟醸や特別本醸造などの名称が決まります。
季節ごとの日本酒
日本酒は、四季によって味わいが異なるのも特徴の1つです。新米を使って造られた冬の新酒は、スッキリとした味わいがあります。春酒は華やかな香りやラベルでお祝い事を彩るほか、味わいも香り豊かで甘いものが多い傾向があります。ピンクに色づいたお酒もあり、見た目も楽しめるでしょう。夏は暑くても飲みやすい、さっぱりとした酸味の効いたものやフレッシュな味わいの生酒などが多い季節です。秋は、丸みのある味わいが楽しめる「ひやおろし」のシーズンです。ひやおろしは、通常は2回行う火入れ(加熱処理)を1回で留め、蔵で半年熟成させて造られます。
段深くなる楽しみ方
日本酒の味わいに関わる代表的な要素には、温度と食べ物、そして酒器が挙げられます。これらを知ったうえで、小さな違いにもこだわると一段と深い楽しみ方ができるでしょう。
温度で楽しむ
同じ日本酒でも温度によって味わいは大きく変わります。冷えた冷酒は、キリッとしていて爽やかな味わいを楽しめるため、香りやアルコール感が苦手な方におすすめです。常温で楽しむ冷やは、本来の味を感じやすいとされていて、各日本酒の個性を楽しめます。温めた熱燗やぬる燗は、お米の味がはっきりと感じられ、香りも豊かです。
1杯飲む間にも時間とともに温度が変わり、味や香りがそれにともなって変化するため、同じ日本酒でも飲みながら様々な雰囲気を感じられるでしょう。
食べ物と楽しむ
食べ物の相性を見ながら日本酒を嗜むのも、楽しみ方の1つです。代表的な組み合わせは、刺身と冷酒でしょう。脂の乗ったマグロは、スッキリと癖のない冷酒を合わせると生臭さが気にならずに楽しめます。よく出汁の染みたおでんの大根に、米の旨味がしっかりと乗った熱燗は冬の風物詩です。このように、味の濃い食べ物には旨味が強い日本酒、熱い食べ物には熱燗という相性を合わせる「ペアリング」は基本の考え方です。
一方で、食べ物と日本酒の味の重なりから新しい味わいが生まれる、「マリアージュ」という考え方もあります。どちらも一興で、楽しみ方に幅があるのが日本酒の良さといえます。
酒器で楽しむ
日本酒は、酒器で舌触りや温度変化の度合いが変わります。片口(かたくち)や徳利(とっくり)、お猪口(おちょこ)などで楽しむ方が多いのではないでしょうか。
陶磁器の酒器は熱を逃がしにくく、錫(すず)のものはお酒の雑味を取り、丸く甘くするとされています。底に青い二重の円が付いた蛇の目模様のお猪口では、白い部分で色を、青い部分で透明度を見ることで酒質を判断できるのも楽しみ方の1つです。
一方グラスで飲むと、器の匂いがないため日本酒の香りがはっきりと分かります。飲み口が広がった形状の天開(てんかい)や、手の温度が伝わりやすい丸グラスなどがあります。
お祝い事などで升で飲むときは華やかな木の香りを楽しみましょう。漆器は同じ木からできていても升とは異なり、滑らかな口当たりが特徴で飲みごろの温度を長く保ちます。
令和のトレンド
日本酒は日本の伝統産業の1つですが、日々進化し、トレンドが変わっています。トレンドを知れば新しい日本酒の魅力に気付けて趣味の幅が広がるほか、話のタネにもなるでしょう。
流行の風味
風味のトレンドは、若い世代にも飲みやすさのあるフルーティさやガス感です。フルーティなものは薫酒(くんしゅ)と呼ばれ、リンゴやバナナのような豊かな香りと、軽めの味わいが特徴です。日本酒離れが進んでいる若い世代にも、ワインのように楽しめて人気があります。微炭酸を感じられる、火入れを行わず造られる生酒や、炭酸ガスを注入したスパークリング日本酒も種類が増えています。
また、アルコールを添加した本醸造も注目度が高まっている日本酒の1つです。日本酒が好きな方のなかには、本醸造はおいしくないというイメージがある方もいるでしょう。しかし、醸造用アルコールは研究が重ねられ、品質が年々向上しています。通好みの淡麗辛口のものから華やかな香りとフルーティな旨味を持つバランスの優れたものまで、様々な種類があります。
品評会で見る最先端
日本酒の味を競う品評会は、様々な形式で開催されています。品評会によって審査基準やテーマは異なりますが、香りや味わいのほか、多様性や新たな醸造技術なども求められます。
ブランドや知名度に左右されないよう銘柄が隠され、酒質のみで審査されるのが一般的です。海外でも日本酒の知名度が上がっており、フランスなどでも日本酒の品評会が行われています。こうした品評会で入賞した銘柄こそ、流行の最先端といえるでしょう。
審査を受けるにあたり、各酒造は日々追及している技術を結集します。一部の大会では市販の日本酒のみで審査が行われ、より地力の出る形式になっています。
ラベルと名前に見る工夫
日本酒は味だけでなく、イメージを大きく左右するラベルや名前も時代と共に変化しています。ラベルには酒造の工夫が見られ、近年ではポップなデザインが増えてきています。瓶を見て選べる居酒屋も多いため、ラベルや名前を見比べて選ぶのも楽しみ方の1つです。
例えば夏酒では、夏を印象付けるために海や花火などの風物詩のイラストが入ったり、涼しさをイメージさせる青色のラベルと瓶が使われたりするものもあります。また、漢字だけでなくひらがな・カタカナ・英語なども増えていて、ラベルからコンセプトが垣間見えます。名前から感じるイメージと実際の味とを比べるなど、通な楽しみ方もできるでしょう。
日本酒を様々な角度から楽しもう
同じ日本酒でも、温度や食べ物の相性、酒器などで味わいが変化します。基礎知識だけでなくトレンドも押さえておくと、日本酒の知識が広がって、仕事仲間や友人などとの話のタネにもなるでしょう。自分なりの感性で新しい日本酒の楽しみを見出してみてください。